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檜山バターン(@hiyanimation)のブログです。note(https://note.com/batahiya)では別の記事を載せていてそっちの方がちゃんとしてます。このはてなブログは知人に読まれることを想定していることが多いです。

コミティア129で買った本の感想

考察っぽいことを書いてしまったところもありますが、基本的にはただ読んで思った感想です。

順番に意味はないです。

2019/09/04 21:56 載せ忘れていた越華くはさんの作品の感想を追加

 

越華くは「からっぽモザイク」

謎の空間に裸で囚われた主人公が、謎の高札に従わされて行動する話。物語の序盤っぽい雰囲気で未完なので感想は抑えます。主人公が服を着るシーンが、最低限の人間性を獲得したことの象徴って感じで良かった。未完の作品は未完と最初に書いておいてほしい。

同「ALoooNE」

こちらも完結していないが一区切り付いている。ゲーム的な戦いが描かれているが、もしゲームだったらクソゲーだろうな、と思えるくらい状況が不明瞭。だがクソゲーの実況動画がわりと面白いように、その不条理な戦いを見させられるのはなんか妙な感じで悪くない。

同「ケーキ!」

三本載った短編集。小噺的なオチの作品が二本と不条理バトルが一本。ケーキをモチーフにしているはずなのに全部サイケな雰囲気で3冊の中で一番好みだった。

僕が手に入れた越華くはさんの3冊の同人誌には「主人公が不可解な空間に置かれて、状況が飲み込めず困惑する」というシークエンスが必ずあって、そこになにか個性を感じました。

 

 

たかはし「禁忌抵触パンドラちゃん」

前回出した4ページ程度の作品に加筆修正した完全版。自分としては前回の少ページ版のほうがパンドラちゃんというキャラが立っていて完成度が高かったように思う。主人公のパンドラちゃんは「タブーに触れたがる少女」というキャラづけなのだが、今回追加されたネタではそうでもなかったためだ。

途中に出てくる「運命変換椅子取りゲーム」という、その後の人生を賭けてやる椅子取りゲームが面白いアイデアだと思った。そのネタは一本の四コママンガで終わるが、それだけで一冊の長編マンガが描けるのではないかってくらい良いと思う。あとパロネタのセンスも良かったと思う。

 

 

 

今井曖昧「太陽がいっぱいと正確に発音できますか?」

メンヘラと百合というコミティア黄金パターン作品。共依存くさい関係なのはわかりやすく描写されるが個々の登場人物について「メンヘラ」という一言で表される以上の特徴が読み取れなかった。

ネットで読める今井曖昧さんの作品全部読んだのだが

https://school.genron.co.jp/works/manga/2017/students/imaiaimai/4333/

↑これが面白かった

 

 

アラスカ4世「レプリカ・プラネッツ」

  「複製」というテーマがさまざまなかたちで繰り返される世界を描いたSF作品。

  歴史は弁証法的に繰り返す……とヘーゲルは言ったそうだが、この作品では複製された歴史は本質的な成長を見せず、むしろ延々と劣化コピーが行われる世界になっている。オリジナルの地球は複製された物質に埋もれ、ずっと活動を停止している。

  終盤まで主人公は「複製」が行われ続ける世界を認識しておかしさに気づくだけの狂言回し以下の存在だが、最後のページでいきなりチェ・ゲバラ(のぱちもん)になる。つまり見世物として複製された歴史を演じる存在になって終わるのだ。

  その劇的な変化の裏で起きた人物の内的変化などは一切書かれない。読者はその推移を認識することしかできない。現前する世界というものを完全に戯画化したすごい作品だと思う。

  作者が何を見てこんな漫画を描いたかはわからない。だが作品で描かれた劣化複製の過程を読みながら、現実のポピュリストが「Again!」とか「取り戻す!」とか失われた威光の復活を叫びながら腐敗を執行する様子が私には想起された。もちろんこういう読者の勝手な想像は作品に評価とは関係ないが、ストーリーまんが的な感情移入を廃した末にリアルが迫ってくるような作品になっていることについて、特筆すべき凄さがあるとは言っていいと思う。

 

 

 

大覚寺花音「苺剣の嘘」

九度計(9dokei)氏による同名の作品「苺剣の嘘」(https://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=74698694)があり、それに触発されて大覚寺花音(現在の名前は悪いメイドさん、旧名藤想)氏が描いた独立の作品…ということだそうです

苺という手紙の役割を与えられた少女が役割を果たすとともに自分の意味を知る物語……と読んだが解釈に自信は無い。今回買ったなかでもっとも読みづらかったマンガです。セリフや文によって設定やストーリーは直裁に言及されることもあるんだけど絵によって表現されないので全然イメージが湧かない。じゃあ小説で書けば良いのでは?と言いたくなるがこの作品の本質は違うところにあるのだと思う。随所に挟まれる、心理描写なのか事象の象徴表現なのかわからない、不条理な絵がなんとも言えない空気感をうんでいて、それが作品の本質をなしているように感じられる。独特の気分が味わい深い作品だった。

 

 

席歯多穂(九度計)「うさぎぐらし」

女がうさぎと融合してうさぎプリンセスになってしまった話。中盤まではわりと楽しんで読んだが終盤はよくわからなかった。もう一度読んで何かわかったら加筆します。

 

 

 

突撃レーザー「スーパーロマンチカイモータル

不死だったり創造主だったりするキャラとSFらしいスケールのデカい設定の話を萌え漫画っぽいノリでやる話

好み……というか自分の作風と少し近いところあると思う、買って良かった。

わちゃわちゃしたキャラが常にいて、萌えギャグ四コマみたいなやりとりを万年規模の輪廻転生の話のオチでやったりする。その感覚にギリシャ神話的な親しみやすさがあって良かった。

絵が粗くてキャラの判別がつきづらかった。

 

 

かえれちゃん、えんちゃん、はるほ(ちゃん)「はっぴーキラ☆sho→」

女児をテーマにしたイラストなどの合同誌。甘ったるいお香のような感じでやばいんだが、ページ数が少ない、もっと堪能したかった。最後の猫うらないが好きです。


かえれちゃん「無料配布まんが」

内容を文字で説明するとほわほわした女児っぽいキャラが「優しさにつつまれたら」の歌詞っぽいセリフ(作者は聴きながら書いたらしい)をB6、4ページにわたり言っているだけなんだけど、なんというか不思議な空気が出ますね。かえれちゃんがかつて出した「いかねこのまんが」は僕が今までに買った同人誌の中でも1,2を争うレベルで好きな作品なのですが、それと同様、かえれちゃんのマンガはキャラがなんか自分語りしてるだけでなんか世界観というかなんというか空気が出るんですよね。とても不思議な才能だと思います。

 

 

 

山本京「Prelude」

シャーペンで描かれた絵の漫画で、びっくりするほど線が綺麗でキャラもかわいい。

ストーリーの児童文学っぽい雰囲気も見事。ちょっと模写しようとしたけど全然うまく描けなかった。

 

 

 

かつざき「Girls eat 鯛」

今回一番ビビった作品。鯛を食うためにやたら頭身の高い女二人が奮闘するという謎のギャグマンガ

ツイートもした通り、見本誌コーナーで読んで良いと思う→ブースに誰もいない→コミティア終わるまでずっと待つ→会って話す→もう売り切れだったのでコンビニで印刷製本してもらう、という流れで手に入れた逸品。

無意味に11頭身くらいあることとか、謎のリズム感とか、ギャグマンガとして真っ当に評価できるポイントもあるんだけど、それ以上になんか読んでいて微笑ましい気持ちになるんですよ。何回も読みかえしてしまう。入手方法が独特で特別な付加価値がついちゃったかもしれないが……、とにかく好きな作品です。

 

 

自分のブースで売った友人の作品

 

コンポート村井(モミョララチチャンタン)「レンズ越しにみてごらん」

作者曰く百合と言うことだが、一人の女が恋人への愛を語るパートがほとんど+ちょっとだけイチャつく内容で、百合漫画になっていないと思った。それ以上にベロベロ髪を舐めるくだりとかで描きたいものが伝わってくるのは良いことか。

 


絵描く天パ「ウサ電」

自分の原稿でヘロヘロになりながら同時進行するこの作品にテスト読者として意見を言ったりアイデア出しとかに協力した……という経緯があるので愛着がある。どころか作品への責任すらある気がする(無い)。

作画時間が少ないなかでセクシーなキャラをドン!と見せられていて、画力が漫画に活かされている感じがある。

一方で構成には粗がある…けどまあコピー本らしくていいじゃんね!

 


かくまい「夢の書き起こし」

作者当人と色々と価値観を共有していて、構想とかも聞かされていた、その俺が読んでもよくのみこめなかった。だからこれを読んで素直に面白かったー!となってくれる人はいないだろうと思った。(普遍的な面白さが無いのではないか、という話で、俺は面白いと思える箇所は随所にあった。)

つげ義春の夢を原案とする漫画などを参照して夢を漫画にしたようだが、残念ながら作品として、その域には遠いと思う。

その理由は質感(マチエール)が少ないからだと思った。黒インクを落としただけの紙になぜ人間がのめりこめるかというとその向こうに世界があって、その感覚、クオリアを受け取れるからだ。

かくまい氏の今までの作品(特に「アラレ革命」)にはちゃんと相応の質感があって、主人公の置かれた空間の空虚さや辛さがペンの筆致から伝わってきた。

今回はそれ以上に絵にこだわっているように見えるのだが、夢という文脈の崩壊した世界の質感を伝えるには不足していたんじゃないかと思った。

実験っぽいことをちゃんとやりきったことは凄いと思うので次作には期待が持てるなと思った。

 

 

以上です。