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檜山バターン(@hiyanimation)のブログです。note(https://note.com/batahiya)では別の記事を載せていてそっちの方がちゃんとしてます。このはてなブログは知人に読まれることを想定していることが多いです。

アニメ作画パクリについてぼんやり思い浮かぶこと

 

 「スティーブンユニバース」とかの作画をPlaystationのプロモアニメがパクっていた件について……

https://twitter.com/ianjq/status/1202124686185787393

 見ようとしたときには公開停止していたのでどのくらいヤバイのかわからない。

 比較だけ見た感じだとアウトだという意見に反対はできない。ただ、穏便に済んでほしい……と思う。なぜならこれが権利問題として展開されたところでアニメーターが得をしないと思う。

 まずこの件はひとり悪いアニメーターもしくは監督がいましたよ、ということではないと思う。今までアニメーションの作画の模倣はけっこうな範囲で許されてきたし会社によって推奨された例もあった。権利意識があいまいになっていたためにこういう事件が起きたのではないか。(しかしその曖昧さが影響をすぐだせるいい環境だったんじゃないかという気がする)

 


 とりあえず思い浮かぶ例を出していきます。

 「ガンダムⅢめぐりあい宇宙」にはガンダムにやられたドムがすごいエフェクトを出して爆発するシーンがあるが、これはテレビ版32話で使われたシーンを描き直したものだ。多分作画監督安彦良和板野一郎が描き直したものだと思うが、元になったシーンを描いたのは鍋島修だ(金田伊功って書かれたウェブサイトを見た記憶もあるがとりあえず鍋島さんということで進めます)。

 しかし鍋島さんは劇場版には不参加で給料もなく、クレジットもされていない。作品のために作画された画像の利用権はサンライズ(日本サンライズ)が得ているから描き直そうがなにしようが問題は無く、その作画の手柄は描き直した者のもの、ということになるのだろう。著作権法的にかなり危ういと思う。使用に関するちゃんとした取り決めがあったとは考えにくいし今も無いんじゃないか。

 


 そして有名どころだとやはりディズニーのトレス。これは比較動画がたくさん作られているので見てほしい

https://m.youtube.com/watch?v=sWKo5veKjVU&hd=1

https://m.youtube.com/watch?v=0MvlipN-Nww

これらの“再利用”はナインオールドメンのウォルフガング・ライザーマンが主導したらしいので、会社公認推奨の模倣だったと言える。*1

 これらも一々元のアニメーターに使用料なんぞ払ってはいないと思う。ちゃんと調べていないので、払っていたケースもあるかもしれないが、1937年の「白雪姫」の作画を1973年の「ロビン・フッド」でトレスしたとき、白雪姫の作画担当*2だったハミルトン・ラスクは死んでいる。そもそも模倣元はライブアクション(またはロトスコープ)した映像なので、原著作者はアニメーター以外に実写の演者も含まれそうでもある。

 


 作画のオリジナリティというのは今まで軽々しく扱われてきた。

 今まで挙げた例は同じ会社の中で作った作品というエクシキューズがあったから、プレステの件とは異質ということはあると思う。だが判断しにくいレベルでの他社作品のパクリは今までもあった。

 例えばアキラの金田バイクがブレーキをかけて止まるシーンのオマージュなどまとめたgifが作られるくらい有名だ。

http://amass.jp/76124/

f:id:fuckinhiyama:20191205104300g:image

 


 見てわかる通りこのgifには明らかにパロディとしてやっているカットも多い。作画模倣の問題は「パロディ/オマージュとパクリの違いがわからない」という著作権につきものの話にもなる。(そもそもアキラのバイクシーンって「湘南爆走族OVAあたりになんかネタ元なかったっけ?)


 あと金田伊功の作画は7,80年代かなりパクられていた(影響を受けた作画は知られているが単なるトレスとしてもあった)と言われる。当時はデジタルが無いから結果的に丸々のトレスにならず、分析できる人もいなかったために問題が表面化しなかったのではないか。問題にならなかった昔がおかしいのか、問題になる今が行き過ぎなのか判断がわかれそうだが。


 延々と記憶のボケたオタク語りをしてもしょうがないので終える。こうした曖昧な権利感覚が続いてきた結果として、模倣が著作権違反とされたとき、現状では誰が誰の権利を侵害したのかはっきりしないと思う。

 映像作品としての権利は制作会社にあるので、今回ならカートゥーンネットワークソニーを訴えることになるのだろうか。そうなって和解金が支払われた場合、ネタ元の原画を描いたアニメーターに金は払われるのだろうか?現状だと払われないんじゃないかという気がする。法律のことはわからんがミッキーマウスのキャラクター商標をめぐる著作権議論がそんな感じで割れているので可能性はあると思う。*3

 まとめると、アニメ作画の権利意識はゆるいものとして進んできたし権利の判断も難しく、侵害された著作物の作り手であるアニメーターがなんの得も得られない可能性もある。そもそも問題化することでオマージュや影響を表現しづらくなることも懸念される。

 今回の件について、そもそも見られていない俺にはどう判断されるべきかはわからないが、該当シーンを自主的に取り下げ作り直すことで納め、権利問題には発展しない……という筋書きになってほしい。それがアニメーターにとって、ひいてはアニメファンにとって一番マシな結果になると思うからだ。

 

 

 

 

 

 

*1:http://screenprism.com/insights/article/has-disney-really-recycled-animations-in-their-feature-films

*2:ディズニーではキャラごとに作画監督がいるので該当シーンのレイアウトをハミルトンが描いた可能性は高い

*3:https://www.kottolaw.com/column/190913.html